2026年7月28日
労務・人事ニュース
令和8年5月の鹿児島県有効求人倍率1.02倍、医療・福祉4,119人の求人需要をどう見るか
令和8年5月の鹿児島県有効求人倍率1.02倍から考える求人票改善
令和8年6月30日、鹿児島労働局は令和8年5月分の鹿児島県の雇用失業情勢を公表しました。令和8年5月の有効求人倍率は、受理地別の季節調整値で1.02倍となり、前月と同水準でした。全国の有効求人倍率は1.17倍で前月より0.01ポイント低下しており、鹿児島県は全国で39番目、九州では佐賀県、宮崎県、熊本県、大分県、福岡県に次ぐ6番目の水準となっています。求人が求職を上回る状況は続いていますが、全国平均を0.15ポイント下回っており、県内の採用市場は強い人手不足感と求人の慎重姿勢が同時に存在している状態といえます。鹿児島労働局は、求人が減少している中で求職は横ばいであり、物価上昇や中東情勢等が雇用に与える影響について引き続き注視が必要としています。中小企業の採用担当者は、この1.02倍という数字を「求人と求職がほぼ均衡している」と見るだけでなく、職種や地域によって採用難易度が大きく変わる市場として読み解く必要があります。
令和8年5月の有効求人数は季節調整値で34,615人となり、前月より0.7%増加しました。4か月ぶりの増加です。一方、有効求職者数は34,047人で、前月より0.8%増加し、5か月ぶりに増えました。求人も求職者も増加しましたが、増加幅が近かったため、有効求人倍率は1.02倍で横ばいとなりました。原数値で見ると、有効求人数は34,023人で前年同月比6.5%減となり、39か月連続で前年同月を下回っています。一方、有効求職者数は35,620人で前年同月比0.2%増となり、6か月連続で前年同月を上回りました。つまり、求職者は増えているものの、企業が出す求人は長期的に減少しています。採用担当者は、単に求人を増やすか減らすかではなく、限られた採用機会で本当に必要な人材に届く求人内容になっているかを見直すことが大切です。
新規求人倍率は季節調整値で1.89倍となり、前月より0.08ポイント上昇しました。3か月ぶりの増加です。新規求人数は原数値で11,600人となり、前年同月比5.5%減少し、5か月連続で前年同月を下回りました。新規求職申込件数は6,899人で前年同月比2.6%減となり、2か月連続で減少しています。新しく出される求人も、新しく仕事を探し始める人も減っていますが、新規求人倍率は2倍に近い水準です。これは、直近で採用を始める企業にとって、求職者との接点づくりが簡単ではないことを示しています。特に中小企業では、応募後の初回連絡が遅い、面接日程が限られる、選考結果の案内が曖昧といった対応が、候補者の離脱につながりやすくなります。求人掲載前に、応募受付後の連絡担当、面接候補日、選考結果の通知期限を決めておくことが、採用成功の基本になります。
産業別の新規求人を見ると、令和8年5月は主要産業のうち、運輸業・郵便業が前年同月比6.7%増、卸売業・小売業が1.4%増、宿泊業・飲食サービス業が6.1%増となりました。一方、建設業は8.9%減、製造業は0.3%減、医療・福祉は8.4%減、サービス業は1.9%減となっています。全体として新規求人は減少していますが、業種ごとの動きは一様ではありません。物流や観光、飲食、小売などでは採用需要が底堅く、同業他社との人材獲得競争が起こりやすい一方、建設や医療・福祉のように求人が減っている分野でも、人手不足が解消したとは限りません。物価上昇や人件費の負担を背景に、必要な人材は欲しいものの、採用人数や募集時期を慎重に見直している企業も多いと考えられます。
運輸業・郵便業では、求人が前年同月比で増加しており、採用競争が強まりやすい状況です。ドライバーや配送関連の求人では、給与だけでなく、配送エリア、勤務時間、必要な免許、車両の種類、積み下ろし作業の有無、安全管理、同乗研修の有無が応募判断に直結します。単に「ドライバー募集」と記載するだけでは、求職者は仕事の負担や働き方を判断できません。1日の流れ、走行距離、荷物の重さ、休憩の取り方、未経験者への指導体制を具体的に示すことで、応募者は安心して検討しやすくなります。人材不足が続きやすい職種ほど、仕事の厳しさを隠すのではなく、支援体制や働き続けられる工夫を正直に伝えることが信頼につながります。
宿泊業・飲食サービス業も前年同月比6.1%増となりました。鹿児島県では観光、飲食、宿泊関連の需要が地域経済に与える影響も大きく、採用活動ではシフトの柔軟性や繁忙期の働き方を具体的に伝えることが重要です。求職者は時給や月給だけでなく、土日勤務の頻度、接客範囲、まかない、研修制度、急な休みへの対応、家庭や学業との両立のしやすさを確認しています。中小企業がこの分野で採用を進める場合、企業側が求める条件だけを並べるのではなく、応募者が安心して働ける理由を求人票に入れる必要があります。未経験者を受け入れるなら、最初に任せる業務、教育担当者、忙しい時間帯のフォロー体制まで示すことで、応募のハードルを下げられます。
医療・福祉は新規求人が前年同月比8.4%減となりましたが、令和8年5月の新規求人数は4,119人で、主要産業の中でも大きな規模を維持しています。医療、介護、福祉関連の採用では、資格や経験の有無だけでなく、夜勤の有無、勤務体制、利用者や患者への対応内容、教育担当者、資格取得支援、身体的負担への配慮、職員同士の連携が応募判断に大きく影響します。求人票に「未経験歓迎」や「ブランク可」と書くだけでは十分ではありません。入職後にどの業務から始めるのか、誰に相談できるのか、研修期間はどの程度かを具体的に示すことで、応募者は働き始めた後の姿を想像しやすくなります。求人が減っている局面でも、職場の安心感を丁寧に伝える企業は、求職者から選ばれやすくなります。
正社員の求人・求職状況を見ると、令和8年5月の正社員有効求人倍率は原数値で0.95倍となり、前年同月より0.04ポイント低下しました。全国の正社員有効求人倍率は0.94倍であり、鹿児島県は全国とほぼ同じ水準です。正社員新規求人数は6,287人で前年同月比2.2%減となり、新規求人数に占める割合は54.2%でした。正社員有効求人数は18,738人で前年同月比2.1%減、正社員有効求職者数は19,599人で1.7%増となっています。正社員を希望する求職者が求人を上回る状態ですが、企業が簡単に採用できるという意味ではありません。求職者は、正社員という雇用形態だけで応募を決めるのではなく、給与、昇給、賞与、休日、残業、転勤の有無、評価制度、教育体制、職場の人間関係を総合的に見ています。
地域別の有効求人倍率にも大きな差があります。令和8年5月の安定所別の原数値では、熊毛が1.42倍、出水が1.13倍、大隅が1.05倍、鹿屋が1.01倍となる一方、鹿児島は0.98倍、川内は0.86倍、宮之城は0.86倍、国分は0.87倍、大口は0.76倍、加世田は0.95倍、伊集院は0.92倍、名瀬は0.81倍、指宿は0.88倍となっています。局計は0.96倍です。県全体の季節調整値は1.02倍ですが、地域によって求人と求職者のバランスは大きく異なります。倍率が高い地域では企業間の採用競争が強まりやすく、倍率が1倍を下回る地域でも、職種や勤務条件が合わなければ応募にはつながりません。採用担当者は、勤務地周辺の通勤事情、車通勤の可否、駐車場、通勤手当、勤務開始時間、転勤の有無を求人票に具体的に記載することが大切です。
求職者側の動きでは、新規求職申込件数6,899人のうち、44歳以下が2,795人で前年同月比5.6%減、45歳以上が4,104人で0.4%減となっています。有効求職者数では45歳以上が21,150人で3.1%増、55歳以上が14,470人で3.8%増、65歳以上が8,355人で3.6%増となりました。若年層だけを採用対象にするのではなく、中高年齢者やシニア人材が活躍できる業務をどう切り出すかが重要になっています。新規求職申込件数の態様別では、在職求職者が1,620人で3.2%減、離職求職者が4,482人で2.8%減、無業求職者が741人で1.6%減となりました。在職中に転職活動を始める人が減っているため、経験者採用を考える企業は、今の職場と比較しても応募したいと思える情報を出す必要があります。
令和8年5月の鹿児島県の雇用情勢から、中小企業の採用担当者が取るべき方向性は明確です。有効求人倍率1.02倍は求人と求職が近い水準にあることを示していますが、就業地別有効求人倍率は1.08倍で、県内で実際に働く人材への需要は受理地別より高くなっています。新規求人倍率も1.89倍であり、直近の採用競争は続いています。採用担当者は、必須条件と歓迎条件を分け、未経験者を育成できる業務、短時間勤務でも任せられる業務、中高年齢者やブランクのある人が活躍できる業務を整理することが重要です。求人票では、仕事内容、給与、休日、残業、教育体制、職場環境、選考の流れを具体的に示し、応募後は迅速に連絡することが採用成功につながります。有効求人倍率の推移は、地域の雇用環境や企業の採用活動を考えるうえで重要な指標です。求人募集を検討している企業の方は、日本全国どこでも対応可能な採用サイト(ATS)の取り扱いにも対応している当社へご相談ください。
⇒ 詳しくは鹿児島労働局のWEBサイトへ


