2026年6月22日
労務・人事ニュース
茨城県の有効求人倍率1.14倍【2026年4月】採用担当者が知るべき雇用市場の変化
茨城県の有効求人倍率1.14倍【2026年4月】産業別求人状況を詳しく解説
茨城労働局が2026年5月29日に公表した2026年4月の県内雇用情勢によると、茨城県の有効求人倍率は季節調整値で1.14倍となり、前月の1.12倍から0.02ポイント上昇した。全国順位は28位となり、求人数が求職者数を上回る状況が続いている。一方で、労働局は県内の雇用情勢について「求人が求職を上回って推移しているものの、一段と改善の動きが弱まっている」との判断を13か月連続で維持した。さらに物価上昇などが雇用へ与える影響についても引き続き注視が必要としており、企業の採用活動においては単純な人手不足対策だけではなく、中長期的な人材戦略の構築が重要な局面を迎えている。
2026年4月の有効求人数は42,717人で前月比2.5%増となり、2か月ぶりの増加となった。有効求職者数も37,488人で前月比0.6%増となり、3か月ぶりに増加している。その結果として有効求人倍率は上昇したものの、前年同月との比較では有効求人数は4.9%減少している。つまり現在の倍率上昇は求人の大幅な増加によるものではなく、求職市場全体の縮小傾向の中で生じている側面もある。
新規求人数は15,159人となり、前年同月比では0.8%減少した。これで16か月連続の前年割れとなる。企業の採用需要そのものが完全に消失しているわけではないが、以前のような積極的な採用拡大局面からは変化が見られる。新規求職申込件数も10,829件で前年同月比1.4%減となっており、求職活動を行う人の動きも鈍化している状況が確認できる。
採用担当者が注目すべきポイントは、有効求人倍率1.14倍という数字の見方である。一般的には1倍を超えると求人数が求職者数を上回り、企業にとって採用が難しい市場とされる。しかし現在の茨城県は単純な売り手市場ではない。求人も求職も減少する中で倍率が維持されているため、企業側は「人材不足だから応募が来ない」と考えるだけでは十分ではない。求職者数が減少しているからこそ、限られた人材から選ばれる企業になることが重要になっている。
産業別に新規求人を見ると業界ごとの差が鮮明になっている。製造業は2,207人で前年同月比7.2%増となった。茨城県は製造業が地域経済を支える重要な産業であり、人材需要の底堅さがうかがえる。特に食料品製造業は25.3%増、生産用機械器具製造業は81.4%増、電子部品・デバイス・電子回路製造業は81.8%増、情報通信機械器具製造業は59.1%増となった。設備投資や生産体制強化を背景に技術系人材の確保が進められている状況が読み取れる。
医療・福祉分野も4,896人で前年同月比2.2%増となった。特に社会保険・社会福祉・介護事業は7.3%増加している。高齢化の進展を背景に介護職や福祉人材の需要は今後も高水準が続く見通しであり、採用競争はさらに激しくなる可能性が高い。
運輸業・郵便業は949人で前年同月比7.1%増となった。物流業界ではドライバー不足が全国的な課題となっており、茨城県でも例外ではない。物流の2024年問題以降、労働時間管理の厳格化や配送体制見直しが進む中で、人材確保は企業経営そのものに直結するテーマとなっている。
一方で減少した業種も目立つ。建設業は1,194人で前年同月比6.1%減となった。卸売業・小売業は1,039人で12.6%減少している。学術研究・専門技術サービス業も9.7%減となった。さらにサービス業は1,965人で12.7%減少している。こうした減少を単純に採用需要の低下と捉えることはできない。採用難が続く中で求人掲載を抑制したり、募集条件を見直したりする企業も存在しているためだ。
宿泊業・飲食サービス業は482人で前年同月比20.5%増加した。特に飲食店は32.7%増となっている。コロナ禍以降の人材流出の影響が依然として残っており、サービス需要の回復に対して人材確保が追いついていない実態がある。観光需要や外食需要の回復が進む中で、採用競争は今後も続くだろう。
正社員採用の状況にも注目したい。2026年4月の正社員有効求人倍率は0.92倍となり、前年同月から0.06ポイント低下した。正社員有効求人数は21,001人で前年同月比4.5%減少している。一方で正社員を希望する有効求職者数は22,860人で前年同月比1.5%増加した。企業側が正社員採用をやや慎重に進める一方で、求職者は安定した雇用を求める傾向を強めていることが分かる。
この数字は中小企業にとって重要な示唆を持つ。求職者が安定性を求める環境では、単なる給与額だけでなく雇用の安定性や将来性を明確に示す企業が選ばれやすくなる。特に中小企業は大企業と比較して知名度で劣るケースが多いため、自社の強みを具体的に発信する必要がある。
近年の採用市場では仕事内容だけでは応募者を集めることが難しくなっている。求職者は企業文化や職場環境、教育制度、キャリア形成支援制度、福利厚生などを総合的に比較している。採用担当者は求人票の内容を見直し、働くイメージが伝わる情報発信を強化することが求められる。
また、有効求人倍率1.14倍という市場環境では応募者を待つ採用手法だけでは限界がある。企業自らが求職者へ積極的にアプローチする採用活動が必要になる。採用サイトの充実やSNS活用、社員インタビューの発信、職場見学会の実施など、企業の魅力を伝える取り組みが重要性を増している。
さらに中小企業は採用対象を広げる視点も必要だ。若年層だけを対象にすると人口減少の影響を直接受けることになる。経験豊富なミドル世代やシニア人材、子育て後の女性人材、Uターン希望者、Iターン希望者など、多様な人材層に目を向けることで採用成功の可能性は高まる。
離職防止も採用戦略の一部として考えるべき時代になっている。求人倍率が1倍を超える市場では転職の選択肢が多いため、従業員の定着率向上は企業競争力に直結する。採用した人材が長く働き続けられる環境を整備することは、新規採用コスト削減にもつながる。
雇用保険関連の指標を見ると、受給資格決定件数は前年同月比5.4%増加し、受給者実人員も8.8%増加した。失業給付を受ける人が増加していることから、一部では雇用環境の変化も見られる。こうした状況下では、採用担当者は景気変動や産業構造の変化によって転職市場へ流入する人材を取り込む視点も重要になる。
茨城県の2026年4月の有効求人倍率1.14倍は、一見すると安定した雇用環境を示しているように見える。しかしその内側では新規求人の16か月連続減少や正社員求人倍率の低下など、採用市場の変化を示す兆候も表れている。製造業や医療・福祉、運輸業などでは依然として人材需要が強く、企業間の人材獲得競争は続いている。こうした状況において中小企業が採用成果を高めるためには、求人倍率という数字だけを見るのではなく、その背景にある求職者の価値観や市場構造の変化を理解し、自社の魅力を明確に発信することが重要になる。これからの採用活動は単なる欠員補充ではなく、企業の成長戦略そのものとして取り組む必要があるだろう。
⇒ 詳しくは茨城労働局のWEBサイトへ


