2026年6月22日
労務・人事ニュース
栃木県の有効求人倍率1.13倍【2026年4月】建設業と医療福祉の採用需要を解説
栃木県の有効求人倍率1.13倍【2026年4月】製造業採用の最新状況
栃木労働局が2026年5月29日に公表した2026年4月の雇用情勢によると、栃木県の有効求人倍率は季節調整値で1.13倍となり、前月を0.01ポイント下回った。全国平均の1.18倍を下回る結果となったものの、求人が求職を上回る状態は継続している。しかし栃木労働局は県内の雇用情勢について、「求人が求職を上回って推移しているものの、求人の動きに足踏みがみられる」と判断しており、景気回復による人材需要と企業の慎重な採用姿勢が混在する状況が続いている。
有効求人倍率が1倍を超えていることから、企業にとっては依然として人材確保が容易ではない市場環境であることに変わりはない。ただし、単純な人手不足だけでは説明できない変化も見られる。求人数は減少傾向にありながらも求職者数も大きく増えていないため、倍率そのものは高水準を維持している。企業の採用担当者は倍率の数字だけを見るのではなく、その背景にある求人と求職双方の動きを正しく理解することが重要になっている。
2026年4月の有効求人数は36,182人となり、前年同月比2.2%減少した。これで34か月連続の前年同月比減少となる。3年近くにわたり有効求人数が減少していることは、県内企業の採用活動が以前より慎重になっていることを示している。一方で有効求職者数は33,717人となり、前年同月比3.0%増加した。求職者数は増えているものの、依然として求人が求職を上回る構造は維持されている。
新規求人について見ると、2026年4月の新規求人数は12,732人で前年同月比1.9%減少した。2か月ぶりの前年同月比減少である。新規求職者数は8,361人で前年同月比2.0%増加しており、新規求人倍率は季節調整値で2.04倍から2.02倍へ低下した。新規求人倍率が2倍を超えていることは、新たに仕事を探す求職者1人に対して2件以上の求人が存在することを意味する。しかしその一方で、企業側が求める人材と求職者の希望条件との間にミスマッチが存在している可能性も読み取れる。
産業別に新規求人動向を見ていくと、業界によって明暗が分かれている。製造業は1,647人となり前年同月比4.3%増加した。栃木県経済を支える基幹産業である製造業では引き続き人材需要が高い状況が続いている。特に輸送用機械器具製造業や電子部品関連分野を中心に技術者や技能職の採用需要が根強い。県内には自動車関連企業や精密機器メーカーが集積しており、生産体制維持のための採用活動が継続していると考えられる。
建設業も1,130人で前年同月比4.3%増加した。インフラ整備や老朽化対策、災害対応工事などの需要を背景に、施工管理技士や現場作業員などの確保が課題となっている。建設業界では高齢化が進んでおり、若手人材の確保が急務となっていることから、採用活動は今後も活発に推移する可能性が高い。
医療・福祉分野は4,320人で前年同月比1.6%増加した。特に社会福祉・介護事業分野では高齢化社会の進展に伴い慢性的な人材不足が続いている。医療機関や介護施設では資格保有者の採用競争が激しくなっており、給与や福利厚生だけでなく働きやすい職場環境の整備が重要な採用課題となっている。
一方で減少した業種も少なくない。卸売業・小売業は1,075人で前年同月比12.6%減少した。消費動向の変化や省人化投資の進展などが背景にあると考えられる。またサービス業は1,449人で7.2%減少している。人材不足が続く中で採用活動そのものを見直す企業も増えている可能性がある。
生活関連サービス業・娯楽業も445人で29.6%減少した。11か月連続の減少となっており、業界を取り巻く経営環境の厳しさが表れている。さらに宿泊業・飲食サービス業は726人で18.1%減少した。観光需要は回復傾向にあるものの、人件費上昇や物価高騰などの影響により採用計画を慎重に進める事業者も見られる。
正社員市場の動向も注目される。2026年4月の正社員有効求人倍率は0.98倍となり、前年同月と同水準だった。正社員有効求人数は18,938人で前年同月比0.6%増加した一方、正社員を希望する有効求職者数は18,938人でほぼ同数となっている。表面的には需給が均衡しているように見えるが、実際には職種や業界による格差が大きい。
例えば製造業の技術職や建設業の専門職、介護職、営業職などでは人材不足が深刻化している。一方で事務職など人気職種には応募が集中する傾向が続いている。そのため企業は単純に求人を出すだけではなく、求職者が魅力を感じる職場づくりや情報発信を強化する必要がある。
採用担当者が特に注目すべきなのは、有効求人倍率1.13倍という数字が示す市場環境である。1倍を超えているということは、求職者が複数の企業を比較しながら応募先を選べる状況を意味している。つまり企業が選ぶ時代ではなく、求職者から選ばれる時代であるという認識が欠かせない。
中小企業の場合、大企業と同じ条件で競争することは難しい。しかし採用市場において重要なのは給与だけではない。求職者は職場の雰囲気や成長機会、人間関係、働きやすさ、経営の安定性なども重視している。特に若年層は働く意義やキャリア形成を重視する傾向が強まっているため、自社の強みを具体的に伝えることが重要である。
また採用活動だけではなく定着率向上にも力を入れる必要がある。有効求人倍率が高い市場では転職の選択肢が多くなるため、入社後のフォロー体制が不十分な企業は離職リスクが高まる。教育制度や評価制度の整備、上司とのコミュニケーション改善、キャリア支援などを通じて長く働き続けられる環境づくりが求められる。
さらに採用対象の拡大も重要な戦略となる。若年層の人口減少が進む中で、ミドル世代やシニア人材、女性人材、外国人材など多様な人材の活用を検討する企業が増えている。特に栃木県では製造業を中心に経験豊富な人材への需要が高まっており、年齢だけで判断しない採用活動が成果につながる可能性が高い。
求職者の動向を見ると、新規求職者数は前年同月比2.0%増加しているものの、自己都合離職者が中心となっている。これは転職市場への関心が依然として高いことを示している。企業にとっては他社で経験を積んだ即戦力人材を獲得できる機会でもあり、経験者採用を強化することも有効な手段となるだろう。
2026年4月の栃木県の有効求人倍率1.13倍は、県内企業にとって依然として厳しい採用環境が続いていることを示している。製造業や建設業、医療・福祉を中心に人材需要は根強く、一方で求人全体は減少傾向にある。こうした状況の中で中小企業が採用競争を勝ち抜くためには、求人票の改善や採用広報の強化だけでなく、働く環境そのものの魅力向上に取り組む必要がある。採用は単なる人員補充ではなく企業成長を支える重要な経営戦略であるという視点を持ち、長期的な人材確保と定着を見据えた取り組みを進めることが今後ますます重要になるだろう。
⇒ 詳しくは栃木労働局のWEBサイトへ


