2026年6月23日
労務・人事ニュース
2026年4月三重県の有効求人倍率1.17倍 製造業求人1,430人から見る採用動向
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2026年4月三重県の有効求人倍率1.17倍と正社員有効求人倍率0.99倍を分析
三重労働局が2026年5月29日に公表した2026年4月の一般職業紹介状況によると、三重県の有効求人倍率は季節調整値で1.17倍となり、前月を0.01ポイント上回った。全国平均の有効求人倍率は1.18倍であり、三重県は全国24位となっている。前月からわずかな上昇ではあるものの、13か月にわたって1.14倍から1.19倍の範囲で推移していた雇用市場が再び持ち直しの動きを見せたことは、県内企業の採用活動を考えるうえで重要な材料となる。
今回の発表では、有効求人数は28,944人となり前月比0.6%増加した。一方、有効求職者数は24,723人で前月比0.5%減少している。求人が増え、求職者が減少した結果として有効求人倍率が上昇した形だ。求人が求職者を上回る状況は依然として続いており、企業側が人材確保に苦戦する構図は大きく変わっていない。
新規求人倍率は1.96倍となり、前月から0.10ポイント低下した。新規求人数は季節調整値で10,287人となり前月比2.3%増加したものの、新規求職申込件数は5,245件で前月比7.3%増加したため、新規求人倍率は低下した。これは新たに仕事を探し始める人が増えていることを示しているが、それでも新規求人倍率は約2倍の水準にあり、企業が人材を確保しやすい状況になったとは言い難い。
三重労働局は県内の雇用情勢について改善の兆しがみられるとしながらも、物価上昇や中東情勢など外部環境が雇用へ与える影響には引き続き注意が必要との見解を示している。企業収益や設備投資の動向が採用活動へ影響を及ぼす可能性があるため、今後の求人動向については慎重な見極めが求められる。
産業別の新規求人動向を見ると、業種ごとの違いが鮮明になっている。新規求人数全体は10,574人で前年同月比1.2%減少し、2か月ぶりの減少となった。しかし全ての業種が減少しているわけではない。建設業は1,029人で前年同月比4.1%増加、製造業も1,430人で前年同月比3.1%増加した。三重県の基幹産業である製造業が増加に転じていることは地域経済にとって明るい材料といえる。
医療・福祉分野は2,789人で前年同月比7.7%増加した。特に社会保険・社会福祉・介護事業は1,837人で前年同月比12.0%増加している。高齢化の進展に伴い介護人材への需要は継続して高く、今後も人手不足が続く可能性が高い。またサービス業も1,660人で前年同月比5.7%増加した。職業紹介・労働者派遣業も増加しており、企業の人材確保ニーズが依然として高いことがうかがえる。
一方で卸売業・小売業は1,036人で前年同月比18.0%減少した。宿泊業・飲食サービス業も842人で前年同月比9.2%減少している。生活関連サービス業・娯楽業は24.8%減少となり、消費動向の変化や人件費上昇への対応が影響している可能性がある。
求職者の動向を見ると、新規求職申込件数は7,137件となり前年同月比1.9%増加した。5か月連続の増加であり、転職市場が活発化していることが分かる。新規常用求職者数も7,119人で前年同月比2.0%増加した。
特に注目したいのは離職者の増加である。離職者は5,242人で前年同月比4.2%増加した。事業主都合離職者は1,517人で前年同月比7.7%増加し、自己都合離職者は3,224人で前年同月比7.3%増加している。転職を前向きに検討する人材が増加していることが読み取れるため、企業にとっては経験者採用の機会が広がる一方で、自社社員の離職防止対策も重要になる。
地域別の有効求人倍率を見ると、三重県内でも大きな差がある。2026年4月時点で四日市所は1.23倍、鈴鹿所は1.30倍、津所は1.17倍、松阪所は1.28倍となった。一方で桑名所は0.93倍、伊賀所は0.84倍となり1倍を下回っている。同じ三重県内であっても地域ごとに採用環境は大きく異なるため、採用担当者は県全体の数字だけでなく、自社が所在するエリアの労働市場を把握することが欠かせない。
正社員市場についても重要な変化が見られる。正社員有効求人倍率は0.99倍となり前年同月の0.97倍から上昇した。正社員有効求人数は13,962人で前年同月比2.0%増加し、有効求職者数は14,108人で前年同月比0.2%減少した。正社員市場では依然として求職者数がわずかに上回っているものの、需給バランスは改善傾向にある。
ここから中小企業の採用担当者がどのような戦略を取るべきかを考えてみたい。有効求人倍率1.17倍という数字だけを見ると、全国平均に近く大きな変化はないように感じるかもしれない。しかし実際には企業間の採用競争は依然として激しい。特に優秀な人材や若手人材については、多くの企業が獲得を目指しているため、中小企業は従来と同じ採用手法では成果を出しにくくなっている。
まず重要なのは給与条件だけで勝負しないことである。大企業との給与競争は資金力の面で限界がある。そこで中小企業は成長機会や裁量権の大きさ、経営陣との距離の近さ、地域密着型企業としての安定性など、自社独自の魅力を具体的に発信する必要がある。求職者は単に給与額だけではなく、働きがいや将来性も重視して企業を選んでいる。
また求人票の内容を見直すことも重要だ。仕事内容が曖昧な求人は応募を集めにくい。実際の業務内容、入社後の教育体制、キャリアパス、評価制度などを具体的に示すことで求職者の不安を軽減できる。近年は求人情報を比較検討する求職者が増えているため、情報量の差が応募数に直結するケースも少なくない。
さらに採用ターゲットの拡大も有効である。経験者採用だけに依存すると採用競争は激化する。未経験者の育成を前提とした採用や、女性人材、シニア人材、Uターン人材の活用など、多様な人材を受け入れる体制を整えることで採用成功の可能性は高まる。
離職者が増加している現状を踏まえると、転職希望者へのアプローチ強化も有効な戦略となる。自己都合離職者が増えていることは、現職に何らかの不満を抱えて転職活動を始める人が増えていることを意味する。そのため柔軟な働き方やワークライフバランス、職場環境の改善などを積極的に発信することが求められる。
採用活動は募集だけで終わらない。入社後の定着率向上も同じくらい重要である。有効求人倍率が1倍を超える環境では、採用した人材が再び転職市場へ流出する可能性も高い。定期的な面談やキャリア支援制度の整備、適正な評価制度の構築によって長く働き続けられる環境を作ることが企業競争力につながる。
2026年4月の三重県の有効求人倍率は1.17倍となり、前月からわずかに上昇した。求人が求職者を上回る状況は継続しており、人材不足の構造は大きく変わっていない。一方で求職者数は増加傾向にあり、転職市場も活発化している。中小企業にとっては人材獲得のチャンスと競争激化が同時に進行している局面といえる。これからの採用活動では単なる募集人数の確保ではなく、企業の魅力を明確に伝え、求職者との信頼関係を構築しながら長期的な人材確保を目指す視点がより重要になるだろう。
⇒ 詳しくは三重労働局のWEBサイトへ


