2026年6月23日
労務・人事ニュース
2026年4月兵庫県の有効求人倍率0.94倍と新規求職者12080人が示す転職市場
2026年4月兵庫県の有効求人倍率0.94倍と新規求人倍率1.65倍を分析
兵庫労働局が2026年5月29日に公表した2026年4月の一般職業紹介状況によると、兵庫県の有効求人倍率は季節調整値で0.94倍となり、前月から0.01ポイント上昇した。有効求人倍率が上昇したのは13か月ぶりである。しかし、兵庫労働局は県内の雇用失業情勢について「求職が求人を上回り、持ち直しの動きが弱まっている」と判断しており、物価上昇などが雇用に与える影響にも引き続き注意が必要としている。数字だけを見ると改善の兆しが見えるものの、実際の採用市場は決して楽観できる状況ではなく、企業の採用担当者にとっては環境変化を冷静に分析することが求められる局面に入っている。
2026年4月の有効求人数は74,698人となり、前月比1.6%増加した。15か月ぶりの増加である。一方、有効求職者数も79,537人となり、前月比0.8%増加した。有効求人倍率は0.94倍であり、求職者数が求人を上回る状態が続いている。つまり兵庫県では依然として仕事を探す人の方が多く、企業が求人を出しても人材不足に直面する大阪府などとは異なる構造が見られる。
ただし、この0.94倍という数字だけで採用しやすくなったと判断するのは危険である。採用担当者が注目すべきなのは、新規求人倍率の推移である。2026年4月の新規求人倍率は1.65倍となり、前月から0.05ポイント低下した。新規求人数は26,251人で前月比1.3%増加したものの、新規求職者数は15,897人で前月比4.4%増加している。新たに仕事を探し始める人が増えている一方で、企業側の採用需要は以前ほど勢いが強くないことがうかがえる。
前年同月との比較ではさらに明確な傾向が見えてくる。2026年4月の新規求人数は26,587人で前年同月比5.3%減少し、12か月連続の減少となった。有効求人数も74,780人で前年同月比6.4%減少し、26か月連続で前年を下回っている。企業全体として採用活動を縮小または慎重化している状況が続いていることが分かる。
一方で新規求職者数は22,521人となり前年同月比3.2%増加した。有効求職者数は84,214人で前年同月比0.9%減少しているものの、新たに求職活動を開始する人は増えている。企業にとっては人材確保の可能性が広がる一方で、求職者の選択肢も多様化しているため、自社の魅力をどのように伝えるかが重要な課題となる。
近畿地域との比較も興味深い。2026年4月の有効求人倍率は大阪府が1.12倍、京都府が1.22倍、滋賀県が1.29倍、奈良県が1.11倍、和歌山県が1.00倍となっている。兵庫県の0.94倍は近畿主要府県の中でも比較的低い水準に位置する。企業側から見ると人材確保の可能性が比較的高い地域とも言えるが、求職者側から見ると競争がやや激しい地域であることを意味する。
しかし実際の採用活動では単純な倍率以上に職種ごとの差が大きい。業種別の新規求人動向を見ると、増加している業種と減少している業種が明確に分かれている。建設業は2,395人で前年同月比2.7%増加した。製造業も2,797人で前年同月比3.2%増加している。教育・学習支援業は452人で前年同月比30.6%増加し、金融業・保険業も31.1%増加した。
特に製造業の回復傾向は兵庫県の産業構造を考える上で重要である。生産用機械器具製造業は26.9%増加、電子部品・デバイス・電子回路製造業は164.3%増加、鉄鋼業は106.7%増加となっており、一部の製造分野では採用需要が急速に回復している。設備投資や産業基盤強化の動きが背景にある可能性が考えられる。
その一方で減少幅が大きい業種も目立つ。宿泊業・飲食サービス業は1,062人で前年同月比36.2%減少した。不動産業・物品賃貸業は37.9%減少、学術研究・専門技術サービス業は30.8%減少となっている。卸売業・小売業も9.4%減少した。こうした数字からは、人件費上昇や物価高騰への対応として採用計画を見直す企業が増えている現状が見えてくる。
兵庫県の採用市場をさらに詳しく見ると、地域ごとの違いも大きい。2026年4月時点の地域別有効求人倍率は淡路地域が1.66倍と最も高かった。次いで西播磨地域が1.11倍、但馬地域が1.07倍、丹波地域が1.06倍となっている。一方で神戸地域は0.90倍、東播磨地域は0.83倍、阪神地域は0.70倍である。
阪神地域の0.70倍は求職者数が求人を大きく上回っている状態を示している。神戸地域も0.90倍であり、大都市圏では比較的人材確保がしやすい環境が存在する。一方で淡路地域や但馬地域などでは人材不足が続いており、地方企業は都市部以上に採用競争へ対応する必要がある。
正社員市場の状況も重要である。2026年4月の正社員有効求人倍率は0.73倍となった。前年同月の0.77倍から0.04ポイント低下している。正社員有効求人数は35,112人で前年同月比4.9%減少し、正社員有効求職者数は48,088人で前年同月比0.1%増加した。
この数字は企業にとって大きな意味を持つ。これまで人材不足が続いていた業界でも、正社員を希望する求職者が一定数存在していることを示しているからだ。特に若年層や転職希望者を対象とした中途採用では、企業側が魅力的な雇用条件や成長環境を提示できれば採用成功率を高められる可能性がある。
求職者の属性変化も見逃せない。2026年4月の新規求職者数は12,080人で前年同月比2.6%増加した。そのうち離職者は8,896人で前年同月比2.7%増加している。事業主都合離職者は2,451人で前年同月比9.4%増加した。自己都合離職者も5,847人で前年同月比1.6%増加している。
事業主都合離職者が大幅に増加している点は、企業の採用担当者にとって重要なシグナルである。経験を持つ人材が労働市場に流入しているため、中途採用市場にはこれまで以上に優秀な人材が現れる可能性が高まっている。単に応募者数を増やすだけではなく、即戦力人材を獲得するための採用設計が重要になる。
また在職中の求職者も2,237人存在している。働きながら転職活動を行う人材は慎重に企業を比較する傾向がある。そのため給与だけでなく、残業時間、休日数、育成制度、キャリアパス、職場の雰囲気など多面的な情報発信が欠かせない。
中小企業の採用担当者は、この有効求人倍率0.94倍という数字をどのように活用すべきだろうか。私は、今後の採用活動では「応募を集める採用」から「選ばれる採用」への転換がさらに重要になると考える。確かに兵庫県全体では求職者が求人を上回っている。しかし実際には求職者が企業を比較し、自分に合った職場を選ぶ時代であることに変わりはない。
特に中小企業は大手企業と同じ土俵で給与競争を行うのではなく、自社ならではの魅力を言語化することが重要である。経営者との距離が近いこと、若手でも挑戦できること、地域密着で安定した事業基盤を持つことなど、大企業にはない価値を明確に伝える必要がある。
さらに採用活動と定着施策を一体で考える視点も欠かせない。採用後の早期離職が発生すれば採用コストは無駄になってしまう。面接段階から仕事内容や期待役割を丁寧に説明し、入社後のギャップを最小限に抑えることが重要である。近年は求職者も企業研究を徹底しているため、過度なアピールよりも誠実な情報開示が信頼獲得につながる。
兵庫県の2026年4月有効求人倍率は0.94倍となり、13か月ぶりに上昇した。しかし求人市場全体では新規求人や有効求人数の減少が続いており、雇用情勢は依然として慎重な見方が必要な状況である。一方で求職活動を始める人や離職者は増加しており、中小企業にとっては優秀な人材を確保できる可能性も広がっている。採用担当者には単なる求人掲載ではなく、自社の価値を正しく伝え、入社後の活躍まで見据えた採用戦略が求められている。
⇒ 詳しくは兵庫労働局のWEBサイトへ


