2026年7月31日
労務・人事ニュース
令和8年6月北陸景気調査、免税売上57%増でも求人難が続く企業採用の最新動向
景気ウォッチャー調査(令和8年6月調査)― 北陸(現状)―(内閣府)
令和8年6月に実施された北陸地域の景気ウォッチャー調査では、地域経済はインバウンド需要や観光関連を中心に明るい動きがみられる一方で、物価高や原材料価格の上昇、人手不足、中東情勢の影響による資材調達の不安などが幅広い業種へ影響を及ぼしており、業種によって景況感に大きな差が生じていることが明らかになりました。観光や宿泊業では回復が続く分野がある一方、小売業や住宅関連では消費者の節約志向が強まり、企業活動ではコスト上昇への対応が引き続き大きな課題となっています。
商店街では訪日外国人旅行者による消費が地域経済を力強く支えています。特に米国や台湾からの旅行者が増加し、免税取引件数は前年同月比で約4割増、免税売上金額は約57%増加しました。免税客単価も約1万9,000円まで上昇しており、この効果によって店舗全体の売上は前年同期比で約45%増となるなど、大幅な改善がみられています。前月の月間売上を既に上回る勢いとの声もあり、北陸地域ではインバウンド需要が地域経済の重要な支えとなっています。
観光需要を後押しする取り組みも成果を上げています。県内宿泊者を対象に実施されたデジタル地域通貨や紙クーポンによるキャッシュバック施策では、土産物店や飲食店の利用が増加し、週末を中心に来客数と客単価が大きく伸びました。観光型旅館でも県の観光支援策を背景に予約が増加し、都市型ホテルでは企業研修や学会など団体利用が好調で前年を上回る稼働率となっています。宿泊部門ではインバウンド需要も引き続き堅調に推移し、レストラン利用にも好影響を与えています。
一方で、観光関連全体が順調というわけではありません。能登半島地震の被災地域では宿泊客数は回復傾向にあるものの、工事関係者の宿泊が減少しているため全体の宿泊者数は横ばいとなっています。また、旅行会社からは物価高や石油関連資材の高騰によって企業業績が悪化し、社員旅行や団体旅行を中止する企業が出始めているとの報告もありました。テーマパークでも団体客や個人旅行客を含め国内旅行者数が前年を下回るなど、地域や施設によって状況には違いがみられます。
小売業では消費者の節約志向が一段と強まっています。スーパーではイベント開催日に集客はあるものの、日常的な来店客数に大きな変化はなく、価格に敏感な消費者が増えているとの声が聞かれます。コンビニでは来客数が前年比で約8%減少し、売上は商品単価の上昇によって前年の99%を維持している状況です。おにぎり1個が200円を超える価格となるなど、食品価格の上昇が来店頻度の減少につながっているとの見方も示されています。
衣料品販売でも厳しい状況が続いています。気温の影響もあり夏物衣料の販売が伸び悩み、高収益商品である衣料品はビジネス向け、カジュアル向けともに苦戦しています。節約志向の強まりから高額商品の購入を控える動きが続き、セール開始後も期待したほどの売上にはつながっていません。一方で靴やバッグ、化粧品など周辺商品の動きは比較的安定しており、消費動向にも商品カテゴリーごとの差が表れています。
乗用車販売では環境性能割の廃止や新型車投入の効果によって一部で販売改善がみられる一方、新車・中古車ともに購入を慎重に判断する消費者が多く、大幅な回復には至っていません。車両価格や部材費の上昇によって販売単価は高止まりしているため売上は一定水準を維持していますが、販売台数そのものは伸び悩んでいます。タクシー業界でも5月末の運賃改定によって運賃は16%上昇したものの、利用者は節約のため乗車回数や夜間の外出を減らす傾向がみられています。
住宅関連では住宅価格の上昇が販売へ大きな影響を与えています。新規分譲地では契約が進む事例もある一方で、住宅展示場への来場者数や問い合わせ件数は減少傾向にあります。建築資材価格の高騰に加え、住宅ローン金利の上昇も購入意欲を抑える要因となっています。さらに中東情勢の影響による建築資材不足や価格高騰が住宅価格へ反映され、これまで競合ではなかった低価格帯住宅メーカーとの競争も激しくなっています。
企業活動では製造業の一部で改善がみられました。プラスチック製品製造業ではナフサ不足による深刻な状況を脱しつつあり、金属製品製造業では取引先の調達不安を背景に新たな需要が発生しています。電気機械器具製造業でも車載関連や産業機器向け受注が順調に推移し、生産量の改善が続いています。輸送業でも売上は増加傾向にあり、燃料価格の安定が今後の業績改善につながるとの期待が寄せられています。
しかし、多くの企業では依然としてコスト上昇への対応が課題となっています。繊維業界では石油由来の原材料や燃料価格が高騰し、全てを販売価格へ転嫁することが難しい状況です。金融機関からも原材料不足によって販売機会そのものを失う可能性があるとの指摘がありました。食料品製造業では能登半島地震から2年半が経過した現在も被災前の売上を下回る状況が続き、中東情勢によるさらなるコスト増加が経営を圧迫しています。
司法書士からは事業承継者不足を理由とした黒字解散の相談が増えているとの報告もあり、人材不足が地域企業の将来的な事業継続へ影響を及ぼしている実態も明らかになりました。税理士からも、人手不足と資材調達の停滞によって幅広い業種で業務の滞留が発生しているものの、現時点では在庫や内部資金で対応している企業が多いとの見方が示されています。
雇用情勢では大きな改善や悪化はみられませんでした。人材派遣会社では3か月前と比較して求人に大きな変化はないとの見方が示される一方、民間職業紹介会社では新規求人案件が少なく、中小企業では求人を出しても応募者が集まりにくい状況が続いています。求職者は年齢層が高くなる傾向もあり、企業が求める人材とのミスマッチが課題となっています。
採用面では、人材派遣会社から派遣スタッフ数が3か月前より数名減少したとの報告もあり、人材確保の難しさが続いています。また、大学の就職担当者からは求人依頼に訪れる企業が、原材料費や燃料費の高騰、資材調達の困難さについて説明するケースが依然として多いとされています。今回の調査では有効求人倍率に関する具体的な数値は示されていませんが、企業は採用活動を継続しながらも、経営環境の変化を踏まえて慎重に人材確保を進めている状況がうかがえます。
今回の調査からは、北陸地域ではインバウンド需要や観光支援策が地域経済を支える一方、物価高や原材料価格の上昇、人手不足、中東情勢による供給不安が幅広い業種へ影響を与えていることが確認されました。採用市場では求人需要そのものは大きく変化していないものの、人材不足や求職者とのマッチングが企業の課題となっています。今後は観光需要の持続性に加え、資材価格や物価の動向、企業の採用活動や人材確保の状況が北陸地域の景気を左右する重要な要素となりそうです。
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