2026年9月15日
労務・人事ニュース
2026年9月、賃金上昇に「企業規模差」 2024年はプラスの属性グループ70%超
ESRI Discussion Paper No.407 賃金伸び率のばらつきの動向(内閣府)
2026年9月、国内の賃金上昇をめぐり、働く人の属性によって伸び率の差が拡大していることを示す研究結果がまとまりました。特に2023年以降は企業規模や地域による違いが目立ち、賃上げの広がりに差が生じていると分析されています。
国内では1990年代後半から2020年代初頭まで、20年以上にわたって賃金が上がりにくい状況が続いてきました。その後、物価上昇や人手不足などを背景として、2023年ごろから賃金を取り巻く環境に大きな変化がみられるようになっています。
今回の研究では、性別、年齢階層、学歴、業種、企業規模、地域という6つの属性を組み合わせ、条件が近い雇用者のグループごとに平均的な賃金の伸びを分析しました。対象は20歳から64歳までの正社員・正職員で、一般の就業形態に該当する人です。
分析には1990年から2024年までの賃金に関する公的統計の調査票情報が使われました。ただし、2004年から2005年にかけて調査票の変更によるデータの断層があるため、主な分析では2005年から2024年までの期間が中心となっています。
賃金は所定内給与を所定内労働時間で割った時給を用い、物価変動の影響を取り除いた実質ベースで分析しています。また、年齢階層を一定にして経年変化を確認することで、定期昇給とは異なる賃金そのものの変化を捉える方法が採用されました。
分析結果で注目されるのが2024年の変化です。属性別にみた実質賃金の伸び率は中央値が1.9%となり、75%点では5.3%に達しました。一方、25%点はマイナス1.2%で、賃金上昇がすべてのグループに同じ程度で広がったわけではありません。
2024年には実質賃金の伸びがプラスとなった属性グループの割合が70%を超えました。2000年代半ば以降は、2014年を除いてプラスとなるグループがおおむね50%に近い状態だったため、足元では賃金上昇の裾野自体が広がっていることが示されています。
一方で、賃金が上昇するグループの増加と同時に、伸び率のばらつきも大きくなりました。賃金伸び率のばらつきは2000年代後半から2010年代末にかけて縮小傾向にありましたが、コロナ禍で拡大した後、2023年から再び上昇しています。
2024年には賃金伸び率のばらつきが、分析上の比較基準となる2006年の水準を初めて上回りました。平均的な賃上げ率だけでは把握しにくい、働く人の属性や勤務先による賃金上昇ペースの違いが大きくなっている状況が浮かび上がります。
企業規模別では、大企業で2023年以降に賃金伸び率のばらつきが急速に拡大しました。2023年と2024年の2年間では、大企業の賃金伸び率の中央値が0.86%だったのに対し、中堅企業はマイナス0.06%、中小企業はマイナス0.07%でした。
大企業では賃金が高く伸びるグループがみられる一方、伸び率が低いグループも存在しています。中堅企業では2024年に高い伸びを示す一部のグループが確認されたものの、中小企業では高い賃金上昇がみられるグループがほとんどないと分析されました。
地域による違いも確認されています。大都市圏では従来から賃金伸び率のばらつきが比較的大きく、2023年以降は一部のグループで上昇率が高まったことで、さらに差が拡大しました。一方、地方部では同様のばらつきの上昇が確認されていません。
年齢別では、40代や50代の賃金伸び率のばらつきが20代や30代より大きい状態が続いています。ただ、2023年以降は若い世代でも差が拡大しており、20代や30代の一部で過去と比較して高い賃金上昇がみられることが背景として挙げられています。
2006年から2024年までの中期的な動きをみると、当初の賃金水準が低かったグループほど、その後の賃金上昇率が相対的に高いという関係も確認されました。低賃金層では最低賃金の引き上げなどが賃金の底上げにつながった可能性が指摘されています。
ただし、賃金水準の低いすべての雇用者が高い伸びを経験したわけではありません。分析では、相対的に低い賃金のグループで高い伸び、高い賃金のグループで低い伸びが確認され、全体として賃金格差を縮小させる方向の動きが続いたとされています。
今回の結果では、2023年以降に人手不足など労働市場の需給状況が賃金上昇へ反映される中で、企業規模と地域による賃金伸び率の違いが拡大したことが重要な特徴となりました。賃上げ余力の違いが、賃金上昇のペースにも表れている可能性があります。
ただ、今回の分析は同じ人物の賃金を長期間追跡したものではなく、条件が近い雇用者を属性別のグループに分け、その中央値の変化を調べたものです。このため、個々の労働者が実際にどの程度の賃上げを受けたかを直接示す結果ではない点には注意が必要です。
2024年には実質賃金がプラスとなった属性グループが70%を超える一方、伸び率の中央値1.9%に対して75%点は5.3%、25%点はマイナス1.2%でした。賃上げの裾野が広がる中、その恩恵の大きさには明確な差がみられています。
人材の採用や定着を考える企業にとっても、平均的な賃上げ率だけでなく、企業規模や地域、年齢などによって賃金上昇の状況が異なる点は重要です。今後は賃金上昇がどこまで幅広い雇用者や企業へ広がっていくのかが焦点となります。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ


