2026年7月26日
労務・人事ニュース
令和8年5月の東京都有効求人倍率1.70倍、保安職業12.89倍から見る職種別採用
東京都の令和8年5月有効求人倍率1.70倍から考える求人票改善
令和8年6月30日、東京労働局は令和8年5月分の東京都の一般職業紹介状況を公表しました。令和8年5月の有効求人倍率は季節調整値で1.70倍となり、前月から0.04ポイント低下しました。新規求人倍率も3.28倍で、前月より0.13ポイント低下しています。東京労働局は、都内の雇用情勢について、求人が求職を上回って推移しているものの、物価上昇や中東情勢などが雇用に与える影響に留意する必要があるとしています。東京都は全国の中でも求人倍率が高い地域であり、全国の有効求人倍率1.17倍を大きく上回っています。しかし、前月から倍率が低下していることや、求人の原数値が前年同月を下回っていることを踏まえると、採用市場が一方的に強い状態で拡大しているとは言い切れません。中小企業の採用担当者は、この1.70倍という数字を「採用が難しい」という一言で片付けるのではなく、求人需要は高い一方で、企業も求職者も慎重に動いている市場として見る必要があります。
令和8年5月の有効求人数は季節調整値で346,869人となり、前月比1.0%減少しました。2か月ぶりに前月を下回っています。一方、有効求職者数は204,408人で、前月比1.4%増となり、2か月連続で前月を上回りました。求人が減り、求職者が増えたことで、有効求人倍率は低下しました。採用担当者にとって重要なのは、求職者が増えたからといって、すべての企業に応募が集まりやすくなるわけではないという点です。東京都では求人の選択肢が多く、求職者は給与、休日、勤務時間、仕事内容、勤務地、在宅勤務の可否、職場環境、成長機会を比較しながら応募先を選びます。中小企業は大企業と比べて知名度や採用予算で不利になりやすいため、求人票や採用ページで会社の実態を具体的に伝えることが、応募獲得の出発点になります。
原数値で見ると、有効求人数は339,273人で前年同月比4.9%減少し、12か月連続で前年同月を下回りました。有効求職者数も212,605人で前年同月比2.5%減となり、7か月連続で前年同月を下回っています。求人も求職者も前年より減っているため、採用市場全体が活発に拡大しているというより、必要な求人は多いものの、企業側の採用姿勢には慎重さが出ている状況といえます。中小企業では、人件費上昇、物価上昇、オフィスコスト、仕入れ価格の変動、先行きの不透明感などを踏まえ、採用人数や募集時期を見直すケースもあるはずです。ただし、採用を止めてしまうと、必要なタイミングで人材を確保できないリスクがあります。採用人数を絞る時期ほど、求人内容の精度を高め、求める人物像を明確にすることが大切です。
新規求人数は季節調整値で118,825人となり、前月比3.8%減少し、3か月ぶりに前月を下回りました。新規求職者数は36,218人で、前月比はほぼ横ばいです。原数値では、新規求人数が106,574人で前年同月比8.9%減となり、10か月連続で前年同月を下回りました。新規求職者数も36,682人で前年同月比4.0%減となり、6か月ぶりに前年同月を下回っています。新規求人倍率3.28倍という高い水準は、直近で採用を始める企業にとって、求職者との接点づくりが非常に重要であることを示しています。応募者は複数の求人を同時に比較しているため、応募後の連絡が遅い企業、面接日程の選択肢が少ない企業、選考結果の案内が不明確な企業は、候補者を逃しやすくなります。東京都の採用では、求人掲載前の準備だけでなく、応募後の対応速度も採用力そのものです。
産業別の新規求人数を見ると、主要9産業のうち増加したのはサービス業のみで、20,882人、前年同月比8.2%増となりました。一方、卸売業、小売業は8,825人で37.0%減、建設業は4,912人で23.8%減、生活関連サービス業、娯楽業は2,608人で23.7%減、情報通信業は8,164人で10.5%減、製造業は3,401人で5.9%減、運輸業、郵便業は4,054人で4.9%減、宿泊業、飲食サービス業は14,377人で2.0%減、医療、福祉は27,194人で4.6%減となっています。東京都では産業の幅が広く、求人倍率の高さだけでは採用の難しさを判断できません。サービス業では求人が増えているため、人材獲得競争が強まりやすい一方、卸売業、小売業や建設業のように求人が大きく減っている分野でも、人手不足が解消したとは限りません。採用を控えながらも、必要な人材を慎重に探す企業が増えていると見るべきです。
医療、福祉は前年同月比では減少しているものの、新規求人数は27,194人と大きな規模を維持しています。介護、福祉、医療関連の仕事では、資格や経験の有無だけでなく、勤務体制、夜勤の有無、利用者や患者への対応内容、教育担当者、職員同士の連携、身体的負担への配慮が応募判断に直結します。宿泊業、飲食サービス業では、シフトの柔軟性、土日勤務の頻度、繁忙期の働き方、未経験者への研修が重要になります。情報通信業では、担当する業務範囲、使用する技術、リモート勤務の可否、評価制度、学習支援の有無を明確にすることが求職者の安心につながります。中小企業は、求人票に「経験者歓迎」「未経験可」と書くだけでなく、入社後に何を任せ、どのように育てるのかを具体的に示す必要があります。
正社員の有効求人倍率は原数値で1.08倍となり、前年同月より0.07ポイント低下しました。正社員の有効求人数は147,978人で前年同月比8.9%減となり、11か月連続で前年同月を下回っています。一般有効求人全体に占める正社員有効求人数の割合は43.6%でした。正社員の新規求人数は47,201人で前年同月比11.7%減となり、10か月連続で前年同月を下回りました。また、正社員就職件数は1,663件で前年同月比18.9%減となり、就職件数全体に占める正社員就職の割合は29.6%です。正社員求人は1倍を上回っているものの、前年より弱まっています。中小企業が正社員採用を進める際には、雇用形態の安定だけを訴えるのではなく、入社後の役割、研修期間、昇給や賞与の考え方、休日、残業、転勤の有無、評価制度を具体的に伝えることが必要です。
職業別の常用有効求人倍率を見ると、一般常用では保安職業従事者が12.89倍、介護サービス職業従事者が8.79倍、機械整備・修理、検査従事者が6.24倍、建築・土木作業従事者が6.05倍、建設・土木・測量技術者も6.05倍となっています。一方、美術家、デザイナー、写真家、映像撮影者は0.14倍、事務用機器操作員は0.32倍、一般事務従事者は0.38倍、会計事務従事者は0.48倍、営業・販売事務従事者は0.86倍です。パート常用でも、保安職業従事者は18.96倍、接客・給仕職業従事者は10.20倍、介護サービス職業従事者は8.85倍、飲食物調理従事者は7.91倍と高い水準です。採用担当者は、東京都全体の1.70倍だけで判断するのではなく、自社が募集する職種の倍率を見て、訴求内容と選考スピードを変えるべきです。事務職では応募数が集まりやすい可能性がある一方、保安、介護、建設、接客、調理では、求人票の内容と応募者対応が採用結果を大きく左右します。
令和8年5月の東京都の雇用情勢から、中小企業の採用担当者が取るべき方向性は明確です。有効求人倍率1.70倍、新規求人倍率3.28倍という数字は、求人が求職を大きく上回る市場であることを示しています。一方で、新規求人数は10か月連続、有効求人数は12か月連続で前年同月を下回っており、企業側の採用姿勢には慎重さもあります。採用担当者は、まず必須条件と歓迎条件を分け、未経験者を育成できる業務、短時間勤務でも任せられる業務、経験者に裁量を持たせられる業務を整理することが大切です。求人票では、仕事内容、給与、休日、残業、教育体制、職場環境、選考の流れを具体的に示し、応募後は迅速に連絡する必要があります。採用競争が続く中で、求人募集を効果的に行うには、求人情報の発信に加えて応募者対応や採用管理の仕組みづくりも欠かせません。求人募集や採用サイト(ATS)の活用をお考えの企業様は、当社までお気軽にご相談ください。
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